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合わせ鏡のアクマ 08 「・・・ねぇ、これでちゃんと放送できてるの?」 「大丈夫だろう・・・たぶん。私も機械にはあまり詳しくないのでな・・・」 「そう、じゃあ始めるわよ。準備はいい?」 「ああ」 「おっけーです」 「ネックと」 「RBの」 「「「ラジオde都市伝説ー!!」」」 「司会進行は私、ネックおばさんと」 「最近看護学校に通い始めた、RBがお送りする」 「いやー、突然始めちゃったこのラジオ番組ですけど。趣旨の説明をRBさんどうぞ」 「この番組は、リスナーから寄せられた質問等に私達二人で答えていくいわえる『メタ』コーナーだ」 「ちなみに電波ジャックの方法だけど、『深夜のラジオ番組に変な声が聞こえる』という怪談に力を借りてるわ」 「どーもー、『ラジオの声』です」 「しかし残念なことに彼女、収録してる我々には声が聞こえないんですよね~」 「まったくだ、本体を探すのに苦労した」 「ちなみに私はいつでもスタジオにいるので気軽に話しかけてくださいねー」 「たぶんリスナーの皆様には『声』が聞こえてるんでしょうね。私達は声を無視しているわけではないですよ」 「なにせ聞こえないんだ、反応しようがない」 「大丈夫ですよー、差しさわりのあることなんて言いませんからー」 「・・・そろそろ始めるか?」 「あ、そうね。始めましょうか!」 * 「まずは最初の質問。P.N『匿名万歳』さんからのお便り 『なんでパー速でやらないの?』 はい、その質問にお答えします!」 「1スレ目の終わり際に、『続行か否か』を皆に問うた時に 『続行』が多かったので、現在パートスレになっている。 その際、一緒に『パー速かVIPか』を聞いたところ、 『VIPがいい』という答えが多数だったのでこういう状態になっている。以上が理由だ」 「このまま続く場合は、またアンケート取るんでしょうかねー?」 「続いては、P.N『通りすがった名無しさん』からのお便り。 『花子と寓話のテラースレだと思った』 はい、これはどうなんでしょうか?」 「以下に読み上げる文章は1スレ目の1のものだ。 1 名前:VIPがお送りします[] 投稿日:2009/06/10(水) 23 31 50.48 ID GN1DYnK+O 花子さんとか美少女切り裂きジャックと契約して闇夜を舞いたい 調べてみたところ、その漫画に切り裂きジャックは出てきていないと見受けられた。 さらに、同じようなレスがされたときも1は反応していない。以上からおそらく1はそのつもりはなかったのではないだろうか?」 「ところで、この後1氏は『ウェルカムだ!ようこそミス、メリー!』などと発言していたとの未確認情報が・・・」 「全体に関する質問は、こんなところかしらね?」 「まぁ、我々が答えるのも筋違いというものだが・・・」 「今更何を言ってるのよ。それじゃあ次は私達の話への質問およびツッコミね」 「まぁ、登場人物からしかそんなお便り届かないんだが・・・」 「それじゃあ、いってみましょう!」 * 「それではこの質問、P.N『家政夫は見た!」さんからのお便り。 『アクマの元の都市伝説は願いを叶えるんだろ?契約者の願いどーなった』との質問が」 「あー、それは悪魔の悪知恵に引っかかってるんだ。あいつは強引に 『合わせ鏡の悪魔を契約したい』という願いを引き出したんだ。だから願いは叶えられてることになっている』 「へー、子供っぽくても悪魔ね」 「契約者さん・・・不憫ですねー」 「続いて、P.N『黒色ガーネット』さんからのお便り。 『最初に彼らが戦った花子さんはどんな都市伝説だったんですの?』ですって」 「あー、これは『子供を便器に引きずり込む』話だったようだな。だから契約者は水を避ければよかったわけだ」 「強かったの?」 「そこまで強くはなかったのではないと思われるな。契約したての彼が初めての戦闘で10分攻撃をこらえたわけだしな」 「・・・当時から契約者の身体能力が高かったという見方はしないんでしょうか?私もそれは違うと思いますけどね」 「おっと、次が最後のお便りよ。P.N『無敵のプリンセス』さんからの質問。 『墓場でかかってくる電話が、女の子の声なのは何故?』ですって、書き手の趣味じゃないの?」 「これはだな、元々町中にある墓場の声はすべて違っているという設定があって・・・まぁ、最終的には趣味だな」 「ハーレム系の話とか好きなんですよね。きっと」 「ちなみに、契約者達とよく話している墓場が、一応町の墓場群の中で一番古く、一番格上だ」 「☆型云々の時に、頂点の一つだって言ってましたからね」 「たぶん、墓場の声は今後もでてきてくれるでしょう。ヒロインルートはありえませんけど」 「それでは、そろそろ時間となりました」 「今日のラジオde都市伝説はここまで」 「「「それではみなさん、またいつか!」」」 「あ、ラジオde都市伝説はゲスト募集中です。気軽に参加しに着てくださいね~!」 前ページ次ページ連載 - 合わせ鏡のアクマ
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都市伝説との戦いは、体が資本である 体を這って、時には命をかけて戦わなければならない …だから 今の俺の状態は、多分、その勲章と言うやつなんである 多分 「…38度3分…」 「風邪ね、完璧に」 うるせぇ 言い返そうとして、だが、代わりに咳きが出てきた あぁ、畜生 かんっぺきに、風邪である 原因は、わかりきっている 昨日、土砂降りの雨の中、傘をさしていなかったせいだ 「無理するからよ」 「うっせ…だからって、放置しておくわけにもいかないだろうが」 黄色い雨ガッパとの、戦い 土砂降りの雨の日にしか現れない、黄色い雨ガッパ チャンスだったのだ だから、傘がないからと言って、黙っている訳にはいかなかったのだ 「兄貴ん学校に、もう一人、都市伝説と契約してる人いるんでしょ?先生だったっけ。その人に任せる訳にはいかなかったの?」 「…あの先生が契約してるのは、人体模型と白骨標本だぞ。んなもん連れて、学校の外に出れると思うか?」 俺の言葉に、妹は黙り込む はっきり言って、無理だろう あんな不気味なもん(特に、人体模型の方)を連れて外に出るとか、まず無理だ ある程度は服で誤魔化せるかもしれないが、それでもきつい だから、花子さんを連れた俺がやるしかなかったのだ なんとか、委員長を助けられたのだし…まぁ、いいとしよう 「一日二日、食って寝てれば治るだろうし、問題ねぇよ」 「そう?…でも、父さんと母さん、仕事でしばらく家にいないんだよ?」 「全く動けない訳じゃないし、昼飯くらい作れる」 いいから、お前は早く学校行け 昼飯は、仕方ないから学食で済ませておけ うー、と妹はぐずっていたが、手鏡から声をかけてきた鏡婆にも説得され、学校に向かって行った うん、それでいい 俺は風邪を気合で治すから、お前は看病なんてしなくていい けほ、と小さく咳をしつつ、ぼんやりと天井を見上げる 「…けーやくしゃー?」 ひょこり 部屋の中に、花子さんが顔を出してきた てちてち、近づいてくる 「…花子さん。悪ぃ、今日は俺、学校休むな」 「風邪ひーちゃったの?大丈夫?」 ぺとし 額に、花子さんの小さな手が触れてくる ひやり、冷たくて心地いい 「凄く熱いよ?目玉焼きやけそう」 「あー…うん、まぁ、熱あるからなぁ。移るとまずいから、離れた方がいいぞ」 「へーきだよ。都市伝説だから、風邪なんて引かないもん」 それは、そうか 花子さんは、じーっと、こちらを心配そうに見つめてきている …まいった 花子さんを、心配させたくはないのだが が、だからといって、元気な姿を見せる余裕がある訳でもない 正直、疲労も結構溜まっていたのだろう 都市伝説との戦いは、人間にとってハードワークすぎる 「…悪い、花子さん。俺、ちょっと寝てるな」 「うん、わかった。ゆっくり休んでね」 にぱ、と笑ってくる花子さん そんな花子さんに、俺はなんとか笑い返し っふ、と…意識を、深い闇へと沈めるのだった 「………」 じーっと、己の契約者を見つめていた花子さん う~ん、となにやら考え込み …ピコーン!と 頭上に、電球が浮かび上がる いい事思いついた、と言うことだ てちてちてち、花子さんは、契約者を起こしてしまわないように そ~っと、部屋を出て行ったのだった …どれくらい、眠っていたのだろうか? ぼんやりと、意識が覚醒してくる 「…花子さん?」 返事は無い 学校に帰ったのだろうか とりあえず、かすかに空腹感を覚える 食事を作らないと…と、思ったのだが 体が、動かない どうやら、思った以上に重症だったらしい さて、どうしようかと悩んでいると …がちゃり 部屋の扉が、開いた 「あ、けーやくしゃ。起きた?」 「…花子さん?」 学校に帰ったのでは、なかったのか? てちてちてち 花子さんが、何やら運んでくる もぞ、と何とか、上半身だけ起こして確認すると、それは 「…粥?」 「うん!私が作ったんだよ!」 ぴ!と胸をはる花子さん それは、どう見ても粥だ それも、レトルトで作ったものではない きちんと、作ってくれた物だろう そう言えば、花子さんは、あの不良教師が契約している白骨標本から料理を習って、少し料理ができるようになった なぜ、白骨標本が料理できるんだと言う点はとりあえず突っ込まないでおいていたが 「けーやくしゃ、早く元気になってね!」 にぱ~ まるで、天使のような笑顔 俺は、思わずそれに笑い返す 「ありがとうな、花子さん」 ぽふ、と その頭を撫でてやると 花子さんは、ますます嬉しそうに笑って 都市伝説との戦い 体を這った、時には命すらかけた、戦い こうやって、体を壊してしまう事も少なくは無いが …たまには、こう言うのもいいか、と そう、考えてしまうのだった fin 前ページ次ページ連載 - 花子さんと契約した男の話
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“滅びの枝”より ――――植物園の一件より数日後、「組織」本部の一室にて (蓮華 ・・・・・・ふぅ 頭が働かない時は温かい緑茶に限ります 何故か分かりませんが、こうしていると落ち着くので それより (蓮華 どうしたものでしょうか・・・ 現在、私は2つのことについて悩んでいます 1つは、裂邪さんに預けた「レイヴァテイン」の今後 彼の契約していた「シャドーマン」が止めているとは思いますが、 いつ彼が契約して都市伝説に飲まれてしまうか分かりません 契約の負担が軽くできればいいのですが、そんな都合のいい話がある筈も無く それと、もう1つ あの時・・・植物園で戦闘していた時 裂邪さんは影を失い、「シャドーマン」を含めた全ての都市伝説を使用できなくなった でもそれはただ単に、 傍に「シャドーマン」以外の都市伝説がいなかっただけ、とも言えます つまり、彼が何らかの方法で、例え離れていても他の都市伝説を呼び出せるようになれば 彼はもう、あの時ののような苦しい思いをしなくて済む筈 ・・・本当は、「組織」たる者、あまり一般人とは関わらない方が良いのですが、 それでも私はまだ、彼に返しきれていない気がして リュウゼツランの種の礼を、まだし足りなくて・・・ (蓮華 ・・・ダメですね、頭が破裂しそうです 少し、気晴らしにでも行くとしましょうか (蓮華 R-No.5、R-No.50はいらっしゃいますか? (レジーヌ 居る (蓮華 (2文字ですか・・・)少しだけ、彼女をお借りしても宜しいでしょうか? (レジーヌ 良し (蓮華 ありがとうございます 彼女に軽く頭を下げた後、私は部屋を出た それにしても、本を読みながら笑っていたような気がするのですが・・・気の所為でしょうか † † † † 少々自堕落なトップの所為で、このR-No.では、 我々上位メンバーが、区分けされた10の部隊をそれぞれ仕切っていますが、 その区分けされた中で、さらに10名が指揮官の補佐役として選ばれています R-No.50もその1人 『防衛班』を従える、R-No.5の補佐にして・・・抑制係 たまに暴走するR-No.5を抑えることのできる人材です そもそも、抜擢したのは私なんですけどね その彼女、R-No.50は、私が欲しかった程の能力を持っています 能力の性質上、色んな情報が入ってくるので、いつもその情報を提供してくれます ・・・性格に問題があるのですが コンコン (少女 『デビルアローは』!? (蓮華 『超音波』 (少女 『デビルイヤーは』!? (蓮華 『地獄耳』 (少女 『デビルウィングは』!? (蓮華 『空を飛び』 (少女 『デビルビームは』!? (蓮華 『熱光線』 (少女 よぉーし! 声が小さいからもう1回! バキッ!! 音を立てて、ドアは部屋の奥に飛んでゆきました 辺りに種と果肉が飛び散ってしまいますが、こういう時にスイカは便利です その奥では、私と同世代ほどの黒髪の少女がガタガタ震えて涙目で椅子に座っていました この少女がR-No.50です 正直、あの反応が好きで付き合ってるのかと聞かれれば、嘘とは言い切れません (R-No.50 な、なななな何さいきなり!? タチ悪すぎるよ蓮華さん!? (蓮華 貴方にだけは言われたくありません・・・ 単刀直入に言いますが、早速頼りたいのですよ 貴方の、「地獄みm (R-No.50 『デビルイヤー』! (蓮華 ・・・「地ごk (R-No.50 『デ・ビ・ル・イ・ヤ・ー』!!! (蓮華 ・・・・・・『デビルイヤー』という名の「地獄耳」の力を (R-No.50 ぐすん・・・結局言われた・・・ 彼女は観念して私に向き直った (R-No.50 分かった、ちゃんと話すよ ・・・って言っても、そんなに大した話はないよ? まだ『COA』の一件が過ぎて間も無いし、 「教会」がどうだとか、何とか契約書だとか、K-No.が怪しいだとか・・・ (蓮華 ・・・はぁ、やはりそうですか――――待ってください、今何と言いました? (R-No.50 へ?K-No.がどうかした? (蓮華 その前です (R-No.50 何とか契約書のこと? こっちはよく分かんないんだ なんだかブロックがかけられてるみたいでね (蓮華 ・・・契約書・・・その手がありましたか (R-No.50 それより『デビルマン』の話でもしようよ! 私は携帯電話を取り出した (蓮華 R-No.11ですね? 直ちにR-No.研究班を集結させてください できるだけ、機械に強い都市伝説と契約した人を多く動員してくれると助かります 携帯電話を閉じて、彼女を向いて頭を下げた (蓮華 ありがとうございました。私はもう戻ります (R-No.50 え、いや、今来たばっかりjお、おーい!? 何としてでも作り出してみせる 1日でも早く作り出してみせる そうでもしなければ、私の気は収まりませんから あの方に・・・顔向けできませんから ...To be Continued/新たな力へ 前ページ次ページ連載 - 赤い幼星
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雪に覆われた街 日本とは、こんなにも雪が多く降る国だったのか 寒さに負けて、地元展開しているらしいファーストフード店に入り、暖を取っていたイザークとジョルディ 窓から見える光景は、どこまでも真っ白だ ……この、街を覆う雪が、もし、一斉に溶けたとしたら…… (……それこそ、大洪水だな) 思うだけで、口には出さない 口に出したら、また、ジョルディが不安がるから ………ところで さっきから、やけにジョルディが静かなような? 「……ズ、ミミズ……」 ……… …念の為と、日本に来る前に日本の都市伝説を一通り教えたのが仇になったか 叫びだしてないだけ、マシか 「…安心しろ、ジョルディ。この店から都市伝説の気配は感じなかっただろう?それと、その都市伝説が主に語られているのは世界展開しているアレだ。ここはその店とは違う」 「あ、ぅ、でも…」 「ついでに言うと、お前、ハンバーガーは注文してないだろ」 軽く暖を取るだけのつもりだったので、自分達が注文したのはコーヒーとポテトだけだ まぁ、どちらも予想外に量が多めでどうしようかとは思っていたが 「……まったく。お前は怖がりすぎだ」 「う、で、でも……」 びくびくおどおどと、見上げてくるジョルディ その姿に、ふと、昔を思い出す -----一人は、怖いよぅ……早く、帰ってきてね? 「…イ、イザーク、どうしたの?」 「…いや、なんでもない」 駄目だ こいつを、不安がらせるな 怯えさせるな 自分は、この唯一の家族を護る為だけに、生きているのだから ーーーーーあのね、僕、ちゃんと待ってるから……絶対絶対、帰ってきてね あの時 こいつを、置いて行ってしまったから こいつを、一人にしてしまったから あんな事に、なってしまったのだ 「ほら、十分に温まったら、店を出るぞ?」 「あ、う、うん」 もう二度と、あの時のようなことは繰り返させない その為にも、なるべく、ジョルディを一人にさせるわけにはいかない 常に、自分がそばにいなければ そうすれば……自分が、護ってやることができるから できれば、戦ってほしくもないのだ 血に塗れてほしくない 血にまみれている姿を見ると、どうしても、あの時の事を思い出してしまうから (……それでも) 「13使徒」の一人である以上、ジョルディも戦わなければならない ……だからこそ、余計に、自分はジョルディから離れるわけにはいかないのだ 二度と もう、二度と ジョルディを、屍にしない為に to be … ? 前ページ次ページ連載 - 我が願いに踊れ贄共
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【電磁人の韻律詩51~恋路の見る夢~】 私は夢を見ていた。 思い出すのはどこか遠い昔の記憶。 どこか? どこかじゃない。 私が小さい頃過ごしていた軍の施設。 そうだ、私は――――じゃない。 そうだ、私は―――説じゃない。 そうだ、私は――伝説じゃない。 私は人間だった。 都市伝説の力で兵器として何人も何人も。 何人も何人も戦闘員も非戦闘員も容赦無く殺した。 命乞いされてもその言葉の意味も理解せずに殺した。 今まではそれが私のやった事じゃないと思っていた。 私の契約者のやったことで、私は悪くないと思っていた。 でも駄目だ。 今ならはっきり解る。 あれだけ人を見て、人として人と生きてきた今なら解る。 あんなことは人がしちゃ駄目なことだ。化け物のすることだ。 小さな村を一つ消した。 信じている神様が違うからという理由で戦争をする人間の手伝いをして。 そんな人間達の戦争を商売にしている人間達の命令で。 簡単だった。 少し能力を使うだけでまるで花火みたいに人が死んだ。 人の命があんな簡単に失われて良い訳がない。 泣き叫ぶ子供を殺した。 皆やりたがらないからやってあげた。 褒められて、嬉しかった。 私は喜んでいた。 私は……喜んでいたんだ。 私は駄目な人間なんだ。私みたいなのが人で良い訳無い。 駄目な人間な私は駄目な人間なりに殺された。 サムライみたいな男にゴミみたく殺された。 死にかけて、それでも戦おうとしたところで、都市伝説に飲まれた。 そして何時の間にか、私は都市伝説になっていた。 化け物になるのが報いとして丁度良かった。 化け物だったら、私はまだ生きていて良かったのに。 あんなことをしておいてどの面下げて生きていけばいいのだ。 何も考えなかったのが私の罪だ。 何も考えなかった私は何をすればいいのだろう。 恐らく何もしないのが一番良い。でもそれは…… 「―――――――あ。」 目が覚めた。 病院のベッド。 組織の病院じゃない。 「さっき明日君が血相変えて君を連れてきていたよ。」 「え……。」 「また戦っていたのかい?君たちも本当に無茶するねえ。 すぐ戻ってくるから待っていろだってよ?」 「う……。」 「うむ……、まだショックが残っているか。」 言葉が出ない。 どうすればいいのか解らない。 誰かに命令して欲しい。 ああしろ、こうしろ、そう言ってくれれば私はその通りに出来るのに。 楽なのに。でも駄目だ。また思考停止。 思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止 思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止 思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止 思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止 ワタシハヒトリジャナニモデキナイ 「私は一旦この部屋を離れるが……。何か有ったら言ってくれよ。」 太宰さんはそのまま行ってしまった。 私は一人。 私は一人? 解らない誰かに命令して貰わないと。 行動原理がない。 私は行動原理を持つなと言われた。 私は恋路じゃない。 だから知らない、恋路は明日真の為に動けた。 でも私は何をすればいいのか解らない。 都市伝説である恋路は明日真の為に力を尽くした。 契約者を守りたいと思った。 人間の私は名前もない私はどうすれば良いのか解らない。 私に出来ることはない。 私は私は私は私はアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア 思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止 思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止 思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止 思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止 思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止 思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止 思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止 思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止思考停止 ワタシハヒトリデココニイル ワタシハヒトリタッタヒトリ 私は再び目を閉じる 私は一人で夢を見る 【電磁人の韻律詩51~恋路の見る夢~fin】
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翼の高校の頃の同級生が、悪魔の囁きにとり憑かれていないかどうか その、最後の一人の検査を終えて、黒服は街中を歩いていた ひとまず、検査した全員は、悪魔の囁きにとり憑かれてはいなかった 結局、翼の高校の頃の同級生で悪魔の囁きにとり憑かれたのは、誠と藤崎 沙織だけだ 「…一応、あの子のアルバイト先も調べた方が良いかもしれませんね…」 相手の悪意が、翼に絡みついているような錯覚 何者かが、翼を精神的に追い込もうとしているかのような そんな、悪意を感じる もし、誰かが翼を精神的に追い詰める為に、翼の周囲の人間に悪魔の囁きを意図的にとり憑かせているのだとしたら、翼のバイト先の人間も危ないだろう 今すぐにでも、調べに…… …そう、考えていた、黒服の前に できる事ならば、顔を合わせたくなかった人物の姿が、目に入ってきた いや、できる事ならば、顔を合わせたくはないのだが…念のため、顔を合わせなければならない相手、でもある あちらも、黒服に気づいた かつかつとハイヒールをならし、近づいてくる ……こっそりと、悪魔の囁きの検査に使う装置を、作動させておいた 「また、会ったねぇ?初詣以来だね」 「…そうですね」 タバコを咥えたその相手に、なるたけ、嫌悪を示さないよう、努力する それでも、嫌悪感が表に出てしまっていたのだろうか 女性が、小さく苦笑した 「そこまで、嫌う事ぁないんじゃないかい?」 「…申し訳ありません」 小さく、頭を下げる 出来る限り、嫌悪と言う感情は、相手に悟られるべきではないと言うのに 特に、相手は一応仮にも、翼の実の母親なのだ どれだけ、母親としての責務を放棄してきた者だとしても…翼の、たった一人の、血の繋がった母親なのだから 「まだ、翼が見つからないんだよ…あんた、翼があたしに会わないように、何かやってるんじゃないのかい?」 「…私は、何も。翼自身が、あなたを避けているのでは?」 どうしても、彼女に対しては言葉に棘が混じってしまうのを自覚する だが、それは相手もわかりきっているのだろう 彼女…朝比奈 マドカは、肩をすくめてきた 「かもねぇ。翼がアルバイトしてる店によく行くんだけど、一回も顔を合わせたことないよ。逃げられてるんだろうねぇ、あたしは」 「……本当に、嫌われていらっしゃるのですね」 「まったくだよ」 そう 彼女自身、己の息子に嫌われている自覚はあるのだ それでも、今、彼女は翼に会おうとしている 「あの子に、何かご用がおありなのですか?」 「うん?………それを、あんたに言わなきゃいけない理由があるってのかい?」 黒服の言葉に、彼女はやや挑発するように、そう言って来た …表に現すべきではない、と思いつつ 口にするべきではない、と思いつつ、どうしても、嫌味のような言葉が、口をつく 「いえ…ずっと、あの子の事を放置して、母親としての責務を放棄し続けていたあなたが、今更、あの子に何の用があるのかと思いまして」 「……あたしゃ、翼の母親さ。会う為に理由なんていらないだろう?」 …その、彼女の言葉に 明確な、嘘を感じた 何か、理由がある 詳細はわからないが……翼に会う事に、何かはっきりとした理由が存在している 彼女は、嘘があまり得意ではない 隠し事が、得意ではない だから、それがはっきりと、伝わってきて かすかに、黒服は警戒を強めた そうであってほしくない、と願いながら 彼女から…都市伝説の気配を、探って 「………っ」 …都市伝説の、気配を 彼女から、はっきりと、感じ取った 都市伝説契約者 何と契約しているかまでは、わからないが… ……その、契約している都市伝説が、悪魔の囁きである可能性は、否定しきれない 「…どうかしたのかい?」 黒服の様子に、彼女が眉をひそめる いえ、と小さく首を振り…黒服は、真正面から彼女を睨み付けた 「…今、あの子は少々、難しい事情を抱えています。できる事ならば、あの子を刺激するような事は、なさらないでいただきたいのですが」 「刺激なんて、しやしないよ。あの子は、あたしが腹痛めて産んだ子供さ。あの子を傷つけるような事なんて…」 「……してこなかった、とおっしゃるおつもりで?」 黒服の、その言葉に 彼女の表情が、歪んだ 視線が、右往左往する 「…そりゃ、その………親はなくても子は育つ、と言うか…………自由主義で育てたけど、さ」 「あの子が一番、親の愛情を必要としていた、その時に……あなた達は、何をなさっていたのです?」 責めるような黒服の言葉に、彼女は後ずさった …タバコを地面に落とし、踏みにじり、吐き出すように答えてくる 「そりゃ…あたしは、いい母親じゃあ、なかったさ。でも、息子に会う権利くらいは、あるだろう?」 「あの子は、あなたたち両親と会う事事態を拒絶し続けてきています…出来る限り、あの子の心の整理がつくまでは、待っていただきたいのですが」 「……心の整理、ねぇ」 っは、と 彼女の表情が、暗く沈む 「…それを、待ってなんて、いられないのさ」 くるり 彼女は、黒服に背を向ける 「あんたがどう言おうが、あたしは翼に会わなきゃいけないのさ……あんたがいない場所で、翼を見つけてみせるよ」 「…っお待ちください」 はっきりと感じる、都市伝説契約者の気配 それに、ただ、不安しか感じない 「あの子に会って…本当に、あなたは何をなさるおつもりなのです?あの子に、何の用があるのですか?」 「…あんたに言う必要なんて、ないさ。それとも、あんたには聞く権利があるってのかい?」 「……あの子、は」 翼は 自分の、都市伝説である自分の契約者であり …そして 「…あの子は…私の、家族ですから」 黒服の、その言葉に ぴくり、彼女の背中が、小さく震えた 「……そうかい。じゃあ、なおさら言えないねぇ?」 一瞬、振り返ってそう言って来た、その表情は 酷く意地悪なようで、同時に、何か意地でもはっているような、そんな表情で 彼女はそのまま…さっさと、逃げるように黒服の前から立ち去ってしまった …小さく、ため息をつく スーツのポケットから、悪魔の囁きの気配を探る装置を、取り出した 「…反応は、ありませんか……とり憑かれてもいないし、悪魔の囁きの契約者でもないようですね」 とりあえず、そこにはほっとする …だが、しかし 彼女が、いつからかそうだったかはわからないが、何らかの都市伝説契約者となっている事は、事実だ …そして 何らかの、明確な理由をもって、翼と会おうとしている その、理由に 悪意が含まれて居ないとは、言い切れず 「…目的がわかるまでは、警戒した方がいいでしょうね」 だが この事実を翼に伝えるつもりには、黒服はなれなかった 両親の事は、翼にとって幼少期の、悲しい思い出でしかなくて 憎しみの対象でしかなく……しかし、だからと言って、憎みきることもできずにいる存在 その存在の事は、あまり翼の前では口に出したくなかった …どうか これ以上、翼の心を傷つけるような事態が起こって欲しくない 黒服はそう、祈る事しかできなかった to be … ? 前ページ次ページ連載 - とある組織の構成員の憂鬱
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卒業式を迎えた後の、春休みのある晴れた日、散歩中の出来事――― (裂邪 あ゛~ぁ、暇で暇でしょうがない! 2ヶ月以上都市伝説とあってないぜ!? (シェイド コノ4年間デ幾ツモノ都市伝説ヲ消シタノダ。 皆、オ前ヲ避ケテイルノダロウナ。 (裂邪 ん~、そろそろ称号とかほしいな。 “影の支配者・黄昏裂邪”! カッコイ~♪ (シェイド (痛イ・・・コイツ痛イ・・・)ン? (裂邪 ・・・おい、どうかしたのか? (シェイド オ望ミノ都市伝説ダガ・・・ (裂邪 マジ!? どこどこ!? ・・・いないぞ? (シェイド (カナリ巨大ナ「エナジー」ダ・・・コンナ物ガコノ町ノドコニ?)・・・マサカ下カ!? (裂邪 下ぁ? 何を仰るウサギさん、ここは道路だz――― 突然、目の前のマンホールの蓋が吹っ飛び、その中から、3メートルはあろう白い化け物が現れた。 (化け物 シャァァァァァァ! (裂邪 な、何これ!? 白い・・・ワニィ? (シェイド ゴ名答・・・「下水道に棲む白いワニ」ダ! (裂邪 見りゃ分かる! とにかくいつものやれ! 『闇誘拐』! (シェイド 無理ダ。影ガナサスギル。 アレホド巨大ナ物ダト相当ナ大キサノ影ガ必要ダ。 (裂邪 んぁ?ざけんなよ! ワニだぞワニ! 俺食われちまうぞ!? 半ば興奮気味に叫ぶ裂邪。 だがそんな彼らを尻目に、出てきたマンホールに戻っていく白ワニ。 (裂邪 れ? (シェイド ・・・移動シタヨウダナ。 ヨカッタジャナイカ。 食ワレナクテ済ンダ。 (裂邪 バカ! これじゃあ俺が逃がしたみたいじゃん!「太郎くん」消した時、 『狙った獲物は逃がさない、キリッ!』って言っちまったんだぞ!? (シェイド ・・・追ウノカ? 一応追エルガ。 (裂邪 言わなくても分かるんだろ? (シェイド 分カッタ、追ウヨ。 (シェイド ―――ドコニ消エタ? (裂邪 俺に訊くなよバーカ! お前しか感じとれねぇんだろ!? (シェイド (昔ノ方ガ可愛ゲガアッタナ)ムゥ・・・ム、トラエタ。 (裂邪 でかした! 何処だ? (シェイド マァ待テ。・・・他ニモ都市伝説ガ3ツ・・・契約者ノオマケ付キダ。 (裂邪 ヒハハハハハハ!てことは?いよいよお目見えってか!俺以外の契約者が! で、結局場所は!? (シェイド モウスグ着ク。 コノ先ヲ曲ガッタトコロダ。 曲がり角を越えた先に、確かに白いワニと、二人の少年と一人の少女がいた。 さらに少年の一人の背後には黒いマントの男性が、少女の横では幼女が「浮いて」いた。 恐らく、彼等と契約した都市伝説だろう。 (裂邪 ヒハハハハハ! ワニィ!そして契約者共ォ!ここであったが――― (少年A あ、お兄ちゃん。 (裂邪 そう、俺がお前の―――ハ? と言ってる間にワニは再び近くのマンホールへと逃げていった。 (少女 なんだったの?あのワニ? (少年B あれは恐らく――― (裂邪 「下水道に棲む白いワニ」だ。 その名のとおり下水道に住んでる。 そんなことよりお前何で――― (少年A お兄ちゃん、何でここにいるの? この少年、何を隠そう裂邪の弟・黄昏正義である。 (裂邪 俺が訊きてぇわ正義! そしてその背後のおっさん誰!? (おっさん ・・・おい待て、おっさんだと!? (裂邪 それだけじゃない! その傍ら! お前らも契約者か!? (正義 落ち着いてお兄ちゃん! ゆっくり説明するから。 (裂邪 手短にしろ! ワニを追いたい! 説明すると、まずこの裂邪の弟が黄昏 正義(タソガレ マサヨシ)、小学5年生。 その背後にいる「おっさん」が、彼と契約した都市伝説「恐怖の大王」。 そして、彼の友人の日向 勇弥(ヒュウガ ユウヤ)、心星 奈海(シンボシ ナミ)、 彼女の横にいた幼女が都市伝説「コックリさん」のコインである。 他にも、正義は訊いてもいない事を丁寧に全て裂邪に教えた。 大王と契約した小学1年生の時から今日まで事細かに・・・途中、説教も入ってたが。 (正義 ――――はぁ、はぁ・・・ところでお兄ちゃんの隣にいるのは? (シェイド 「シャドーマン」ノ「シェイド」ダ。 (正義 お兄ちゃんも契約してたんだ。お兄ちゃんにも悪い都市伝説と戦うっていう・・・聞いてる? (裂邪 (バカな!?この野郎、俺より少し前に契約していやがっただとぉ!? 既に自分の近くに敵がいた事に今まで何故気づかなかった!? ・・・そうか、前に「太郎くん」が言っていた「ヒーローぶってる契約者」は正義のことか! あの時に気がついていれば良かったんだ!) あ゛~!チクショウ! はらわたが煮えくり返りそうだ! 俺はもう行くぞ! (正義 何処へ? (裂邪 ハァ?さっきの見たろ!? ワニを消しに行くんだよ! おいシェイド!追うぞ! (シェイド イヤ、「エナジー」ガ離レスギタ。モウ追エンダロウ。 (裂邪 この野郎!お前が余計な事までダラダラと――― (勇弥 よし、ここは奈海とコインちゃんの能力で。 (奈海 えぇ~、なんで私がやるのよ? (正義 奈海ちゃんボクからもお願い。 自分への失望で正義の説明の大半を聞いてなかったので、裂邪には何がなんだかさっぱりだったが、 奈海がポケットから10円玉を出した瞬間察したようだ。 (奈海 コックリさんコックリさん、「下水道に住む白いワニ」の居場所を教えてください。 (コイン はぁーい! コインが10円玉に入り、奈海がそれを握り締めて唱えると、何かを感じとったようだ。 (正義 よし、追おう! (裂邪 待て。 どうせなら下水道に入っちまおうぜ。 裂邪は懐中電灯を光らせてみせた。 下水道―――そこは殆ど闇の世界。 マンホールの隙間から差す光も僅かなものであり、 懐中電灯しか頼れるものは無かった。 響き渡るのはネズミと思しき生き物の声と、流れる汚水の音。 そして何より・・・ (一同 くっさぁ! (大王 不便だな、人間は。 (シェイド 全クダ。 (裂邪 黙れ! 後で都市伝説にも効くような悪臭をネットで調べ尽くしてやる! 吼えちらかす裂邪は、奈海と勇弥が変な目で見ていた事に気がつかない。 文句を響かせながらも、彼等は奈海が示す方向に、懐中電灯で照らし出される通路を歩いていった。 (シェイド [トコロデ裂邪、何故コノ後ニ及ンデ彼等ニ手ヲ貸スノダ?] (裂邪 [「手を貸す」ゥ?違うわバーカ!お前が役に立たないから「利用」してんだ! それに、いずれ敵にまわるかも知れんからな。お手並み拝見っつう奴だ。] (シェイド [オ前ノヨウナ悪ニ磨キノカカッタ小学生ハ世界中何処探シテモイナイダロウナ。] (裂邪 [褒め言葉として受け取っとくよ。] その時、奈海が「近い」と言ったのが聞こえた。4人が若干足早になる。 暫く歩くと、奈海の足が止まった。 ポチャンッ バシャバシャ! (裂邪 ネズミじゃないな。 (シェイド アァ、イルゾ。 裂邪が水音のする方向へ光を向ける。 案の定、そこには白い巨大な影があった。 (正義 いた! みんな、行くよ! (シェイド 裂邪、我々モ――― (裂邪 [待て。 お手並み拝見だと言ったろう?] シェイドを制止した裂邪。 しかし彼はまだ知らなかった。 こんなところで、「ヒーローごっこ」を拝まされるとは、微塵も・・・ (勇弥 『勇気』と『知性』の伝説融合、ブレイブ・レジェンド! (正義 『正義』と『剣術』の伝説融合、ジャスティス・レジェンド! (大王 こ、『黒雲』と『奇跡』の伝説融合、キング・レジェンド・・・ (奈海 『波間』と『魅惑』の伝説融合、オーシャン・レジェンド! (コイン 『硬貨』と『記憶』の伝説融合、フォックス・レジェンド! (一同 5人合わせて、レジェンド・ファイブ! (大王 ・・・イブ。 裂邪は呆気にとられていた。 今の裂邪の気持ちを例えるならば、 「ロイヤルドラムクラウン7連散弾ブリキング大砲」を放とうとして一切弾が出てこなかった時のワポルのような、 はたまた、真夜中にクラスメイトのトンチンカンが質問にやってきたが、 内容を忘れてしまっていた時の自分のような気持ちだろうか。 その表情には、呆れと怒りの両方が伺える。 そんな裂邪を放置して、彼等は白ワニに襲いかかった。 呆気にとられながらも、裂邪はしっかりと彼等の戦いを見、そして分析していた。 まずは自らの弟・黄昏正義。「恐怖の大王」は物体を生成し、 それを降らせる能力であるようだが、黒雲を発生しなければならず、必ずその分のタイムラグが生じる。 しかし、正義達に武器として剣を与えるなどが可能な為、どうやら殆どの物体を生成できるようだ。 次に日向勇弥。「電脳世界=自然界論」はかなり厄介そうだ。 この世の秩序を、データを改竄するように扱えるらしい。 例えば、空気を冷却剤無しに壁のような固体にするなど、化学的にはありえないことをやってのけるのだ。 最悪の場合、存在自体を『削除』されかねないが、 使う度に頭を押さえているところを見るに、使いすぎると負担が大きいようだ。 しかも、どちらかというとサポート寄りのようで、さほど恐怖ではない。 最後に心星奈海。彼女もまたサポート寄りであるが、 「こっくりさん」の能力で相手の次の行動を先読み出来るらしく、こちらも厄介になりそうだ。 (裂邪 [とまぁ・・・大体こんなものか。] (シェイド [分析完了、ト言ッタトコロカ。マダ戦ワナイノカ?] (裂邪 [あぁ。奴らの『決定打』も見ておきたい。しかし分からない。 友達同士でヒーローごっこなんて・・・かつての「恐怖の大王」も可哀想だ。] (シェイド [・・・ソモソモ人間トハアァイウモノデハナイノカ?] (裂邪 [それが下らない。ただの馴れ合いじゃん、あれ。] (シェイド [オ前ノ方ガ十分可哀想ダ。] (裂邪 [ほっとけ!] と無駄話をしていると、動きがあった。 どうやら「恐怖の大王」が切れて雷を乱射したらしい。 直接当たりはしなかったが、白ワニは水を伝ってきた電撃で痺れて気絶しまっていたようだ。 (裂邪 [そろそろフィニッシュか。] (シェイド [ソノヨウダ。] (正義 じゃあ早速起こして。 (勇弥 まずい、ここで『クレンズ・ジャスティス』だと!? 裂邪さん逃げて! (裂邪 ハ? (奈海 いや、ノッてるだけですから。 別に危ない要素無いです。 「ノッてる」理由もわからないし、『クレンズ・ジャスティス』さえ何なのかわからない。 もっと理解できないことが、何と正義がたった今気絶させた白ワニを、 ピシャピシャと叩いて起こしているではないか。 (裂邪 ハァ!? 何をしている! さっさと止めを刺せ! (正義 いいかい「下水道に棲む白いワニ」。キミは飼い主に捨てられたみたいだけど―――――― そして正義は、白ワニに向かって説教を始めた。 とても長かった。 (裂邪 (バカか!? 相手は都市伝説で、しかもワニだぞ!?何やってんだ! ・・・まさかこの野郎、今までずっと「これ」を続けていたのか? 今までずっと都市伝説を、止めを刺さずに説教だけしてのさばらせておいたのか!?) 段々裂邪の頭に血が上ってゆくのを、シェイドは目で見て感じていた。 説教を終えた正義は白ワニの頭を撫でていた。仲良くなったらしい。 (正義 よし、それじゃあもう帰るね。 白ワニは名残惜しそうな顔をしているが、ゆっくりと水の中へ入っていった。 そして正義は嬉しそうに、勇弥達に話す。 (正義 「もう人は襲わない」って。 この時、真っ黒な悪の実が一つ、大きな音をたてて弾けた。 汚水を漂う白ワニに背を向け、帰ろうとした正義達だったが、ここで遂に裂邪が動き出した。 ここは下水道。闇は彼等のテリトリーだ。 (裂邪 シェイド! 『闇誘拐』! (シェイド 了解シタ。 シェイドが影にスゥーッと消えた直後、壁から無数に現れた黒い腕は、 汚水の中の白ワニを捕縛し、闇へと引きずり込もうとする。 (白ワニ シャァァァァ! シャァァァァァ! (裂邪 ヒハハハハ! 足掻け足掻けぇ! もがくほど闇に飲まれるぜぇ? (正義 お、お兄ちゃん! 何をしているの!? (裂邪 あぁ? こういう危険因子は潰すに限る! 俺の世界征服の邪魔にもなるしなぁ! 大体お前ら甘すぎるんだよ! 説得なんかして何になるってんだ!? 見てるとはらわたが煮えくり返りそうになる! 「正義」ぶるのも加減にしやがれ! 裂邪が粗方吼え終えた頃、白ワニは既に闇に溶け込んでいた。 (裂邪 ウヒヒヒ・・・ご苦労シェイド。 さて、帰るとするか。 裂邪が早々に帰ろうとした時、正義が前に立ちふさがった。 その鋭い目は真っ直ぐ裂邪に向けられている。 (裂邪 何だ? (正義 お兄ちゃんは間違っている。 この世にいるのは悪い都市伝説だけじゃないんだ! もしそれがわからないんだったら・・・お兄ちゃんの世界征服はボクが絶対に止める。 (裂邪 ウヒヒヒヒ・・・ヒハハハハハハ! あぁ、やれるもんならやってみろ! そういった後、裂邪は正義にわざと体をぶつけ、足早に歩いていった。 (シェイド [恐ロシイ敵ニナリソウダナ。] (裂邪 [どこが?俺はあんな奴に負けない。光があるから影があるように、 正義があるから悪があるんだ!] (シェイド [朝カラオ前痛イナ。] (裂邪 [うるさい! 見てろよ正義、次俺に歯向かったら・・・弟と言えども、闇に葬ってやる!] マンホールの蓋から出ようとした時、外から大人数の声が聞こえた。 (裂邪 ん? 僅かに空いている穴から覗いてみると、人だかりが出来ていた。 (裂邪 やばっ! 人がいる! (シェイド マズイノカ? (裂邪 あいつらは知らないが、俺は人に見られるとまずい! シェイド、今すぐ『シャドーダイブ』! (シェイド 行キ先ハ? (裂邪 なるべく人だかりから離れたところだ。あとは歩いて帰る! (シェイド 了解シタ。 『シャドーダイブ』とは、「太郎くん」との戦いで使っていた、影の中を移動する能力だ。 これで裂邪は、誰にも見られることなく、正義達を置き去りにして外へ出た。 マンホールから数メートル離れた先の、電柱の影から、彼等はスゥーっと現れた。 (裂邪 ぜぇ、ぜぇ・・・い、いつも思うんだが、なんで俺が疲れなきゃ、なんねぇんだ? (シェイド 影ノ中ハ、オ前ニトッテハ「異空間」ナノダ。ソレグライノリスクハ在ル。 シカシ、彼等ヲ置イテヨカッタノカ? (裂邪 いいよ別に。 俺には関係ない。 ソウカ、と呟くシェイドを背に、裂邪は帰路に――― (裂邪 おい、今何時だ? (シェイド ワカランガ、日ノ傾キ具合カラ考エテ・・・ (裂邪 一難去ってまた一難か! もうすぐ門限だ! (シェイド ・・・私ハ影ニ帰ルゾ。 (裂邪 この野郎! まぁいいや、急げ! (黄昏父 皆に話がある。 夕食時。 食事が始まって直ぐに、父が真剣そうな顔で言った。 (正義 お父さん、どうかしたの? (黄昏父 お前達も知っているだろうが、この町には中学校が無いだろ。 1番近いのでも大分時間がかかる。 (裂邪 あぁ、俺も丁度そのことが訊きたかったんだ。引っ越すの? (黄昏父 実は、父さん今月転勤する事が決まったんだ。 (家族 えぇ!? (黄昏父 最近、学校町で事件が多くてな。是非そこで勤務してほしいんだとさ。 (裂+正 学校町!? (黄昏父 ん?何か問題でもあるか?お婆ちゃんもいるし、都合がいいだろ? (裂+正 いや、と、特には・・・ 学校町。もはや説明不要の、都市伝説とその契約者がたむろする町・・・ (黄昏母 でも、今からマサヨシを転校させるのは可哀想じゃない? (黄昏父 そこでだ。 暫く正義はお母さんとこの町に残ってくれ。 裂邪は俺と一緒に学校町に行く。 (正義 えぇ!? (裂邪 え゛!? (黄昏父 明後日にはこの町を出る予定だ。 裂邪は準備しておけよ。 正義も寂しがるな、夏休みにでも会いにきてくれ。 残念がる正義と、それをなだめる母。 だが、裂邪はそれどころではなかった。 (裂邪 (何だと!?ただでさえ行動しづらいのに親父と二人暮らしだぁ!? もし神がいるんだとしたらとんでもねぇ試練だ!世界征服への道は遠い・・・) ...END 前ページ次ページ連載 - 夢幻泡影
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プレダトリー・カウアード 日常編 19 コツコツと、無人の工場に足音が響く。 この場にいるのは、人外が三体。 人面犬、対抗都市伝説、そして――――吸血鬼。 あの時の吸血鬼ではない。あいつは僕が殺し、そして息絶えるのをこの目で見た。 何より、相手から流れ出る「マナ」の感じが違う。 では、この吸血鬼は…………? 「なあ、少年」 吸血鬼がその口を開く。 歩みは依然として止まる気配を見せない。 のろく、されど着実に僕へと近づくソレ。 それでも僕は、その場から一歩たりとも動けなかった。 動作はこの場を壊してしまう。吸血鬼が現れる事で奇妙な膠着へと陥った、場を。 ただそれも、あくまで少しの「先延ばし」にしかならないだろう。 吸血鬼は既にその弁を振るい始めた。 後はただ――――――「戦」ののろしが上がるのを、待つばかり。 ――――そして 「お前は、復讐が愚だと、そう思うか?」 声と同時、吸血鬼がその歩みを疾駆へと変える。 ――――「開戦」だ。 吸血鬼からマナが迸る。火の粉が炎へと転化する。 青のオーラ。その発現が意味するのは「本気」。 「接続」した目が、マナの流れを捉える。 力の道は一直線。対象は――――僕。 (「復讐」って…………?) 心の中で猜疑を漏らし、流れから身を外すべく行動を始める。 マナの流れは動線を表す。 本人の意図するしないに関わらず、吸血鬼が進む、あるいは攻撃する方向に先んじる形で、マナは放出される。 つまり僕の目に映るマナの奔流は、そのままイコールで吸血鬼の進路を示しているのだ。 だから、その流れの範囲外にさえ出れば、吸血鬼の拳が僕を打ち抜くことは無い。 ――――ただし、あくまで「逃れられれば」。 ゴッ! というにぶい打撃音と共に、僕の身体を衝撃が襲う。 殴られた箇所は肩の付け根。幸い以前のように無様に吹き飛ぶ事はなかったけれど、それでも痛みで脳が意識を手放しかける。 ……速い。「あいつ」より、ずっと。 たたらを踏むついでに、吸血鬼との距離を稼ぐ。 拳のめり込んでいた肩を念のために確認すると、既に青いマナがその傷の修復を始めていた。 少しだけ安心する。どうやら復元能力は今日も好調らしい。 …………でも。 (対抗都市伝説、「復元」するのにも、マナは使うんだよね?) 再び現出するマナの道。それを今度は身体を投げ出すように右へと転がる事で逃れながら、対抗都市伝説へと疑問をぶつける。 ≪そうだ。主が彼奴と接触する瞬間、主は彼奴から微量のマナを奪い、それを基に身体を再構成している≫ (さっきの肩の再生にかかったマナと、僕が吸収したマナの差は?) ≪無。それは等値であり――――残念ではあるが、種の『限界』も、そこにある≫ (そっか。了解) 短い対話を追え、僕は体勢を立て直す。 逃げに徹したお陰で、受けた掌打は先程の一撃のみ。 さらに僕と吸血鬼の間には、心もとないながらも若干の距離が生まれていた。 今の内に、対抗都市伝説との会話を整理する。 念頭に置くべきなのは、僕の取り込めるマナの総量に限界があるという事。 それを越えてのマナの摂取は、僕の身体を逆に蝕み、あの時同様の意識喪失、最悪の場合は死をもたらす。 あくまで堅実にいくのであれば、その限界を無視することは許されない。 そして次に考えるべきは、先程再生した肩レベルの傷が、僕にとっての「限り」であるということだ。 今言ったように、僕の吸収できるマナには限界がある。 その限界ギリギリまでマナを喰らい、それら全てを再生に当てた時の限度が――――先の肩。 つまり、僕が何のリスクも負わずに治療できるのは、打撲か、軽度の骨折まで。 それ以上はそれ相応のリスクを背負う事になる。 …………最悪だ。 「あいつ」と戦った時のような無茶はもう出来ない。 尚且つきついのは、たとえ再生の問題を乗り越えた所で、目の前の吸血鬼を倒すのが至難の業だという事だ。 僕には限界がある。 そして「あいつ」を倒したとき、僕は限界を超え、結果入院する事態となった。 対峙した感じ、この吸血鬼は「あいつ」と同じ、あるいはそれ以上のマナを保有している。 もしこの吸血鬼を殺したいのなら、ちまちまと相手のマナを喰らっては消化し、喰らっては消化しを繰り返さなければならない。 あの時のように、一度に大量のマナを喰らう事は、不可能。 ――――逃亡こそが至上。 以前、対抗都市伝説の発した言葉を思い出す。 今は、まさにそうすべき「時」だ。 己よりも強大な敵。戦うなど以ての外の相手である。 ……ただ、その「逃亡」もまた、難しいのだけれど。 ――――さて、どうする? ここまでの推考にかかった所要時間は数秒。 場には再び、二者間の膠着が始まっていた。 僕は、状況把握のために。 相手も恐らく、似たようなものだろう。 幾度の打ち損じ。それは決して、見逃していい事実ではないのだから。 沈黙が降りる。 後幾ばくもないそれを前に、両者は今一度、己の目的を再確認する。 僕は、逃亡。 そして相手は――――「復讐」と呼んだ殺戮の、再開。 【Continued...】 前ページ次ページ連載 - プレダトリー・カウアード
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「さてと」 高元からの返答を聞いた後、出道はにこりと笑って、秀と高元を見つめた …何とも、嫌な予感がする 「それじゃあ、もう一つの用件なんだけど……ほら、うちの学校、春に英会話講師が一人やめて、その補充ができてなかったでしょう?その後釜が、ようやく見付かったんだよ」 なるほど それだけを聞けば、良い話だが わざわざ、自分達にその話を聞かせているという面で、嫌な予感がする 「その、新任講師も、都市伝説関係者でね」 …やっぱりか 軽い頭痛すら、感じてきた 「もし、校内で都市伝説関係の問題が起きたら、協力してくれるって言うから。そう言う意味でも、君達二人とは先に顔を合わせた方がいいと思って」 そう言う事か まぁ、役に立つ戦力ならば、ありがたいが……人体模型のような変態だったらいらない まだ、油断はできない 「…そう言う訳だから。入っておいで」 校長室の、奥の部屋 そこに、出道は声をかけた なるほど、そこに待機していたらしい ……… ………… …………… 返事がない 誰も、出てこない 「あの、校長先生…?」 「ん~…ちょっと待ってて」 不安そうな声を出した高元に、出道は苦笑して 立ち上がり、奥の部屋の扉の前に向かう 「ほら、出ておいでー。大丈夫だよ、とって食べるような人はここにいないから」 そう、声をかけて ぐい、と扉を開けた 「っわ………っとと!?」 びたんっ! …扉の前で、出ようか出ないか、迷っていたのだろうか その人物は、出道が扉を開けた勢いで、前のめりに校長室に入り込んできて…無様に、転んだ 「だ、大丈夫ですか?」 「あぅぅ………う、うん……大丈夫……」 高元に声をかけられ、よろよろと、その人物が立ち上がる 黒い髪に黒い瞳、褐色の肌をした西洋系の顔立ちの…若い青年だ 背は、秀より少し低いくらいだろうか だが、体格は秀と比べれば、随分ひょろりとしている 「えぇと……あぅぅ、その……え、英会話講師として、学校町に来ました、ディラン・ドランスフィールドです……よ。よろしくお願いします…」 おろおろ、おどおどとした態度で、そう、自己紹介してきた青年…ディラン 秀は、じっと、ディランを見つめて… 「チェンジ」 と 一言、あっさりとそう告げた 「あはは、荒神君。風俗とかじゃないんだから、チェンジは無理だなぁ」 「黙れ昼行灯。もっとマシな人材はなかったのか」 「あ、荒神先生。校長先生に向かって昼行灯呼ばわりはちょっと…それと、本人を目の前に、それは言いすぎかと」 秀のあんまりにもあんまりな言動に、苦言を呈す高元 秀は小さくしたうちすると、仕方なく、ディランに向き直る 「…それで。お前の契約都市伝説は、何なんだ」 「あ…えぇと、その……ぼ、僕は、都市伝説、そのもので………インキュバス……淫魔、です…」 ……… ………… …………… 重い 重い沈黙が、校長室内を支配して 「チェンジ」 と 再び口にした秀の言葉が、その沈黙を打ち破る 「だから、チェンジは無理だなぁ」 「黙れふざけるな。ただでさえ一歩間違うと風紀がアレになるこの学校に、何を招きいれている」 「まぁまぁ。彼は、人を襲ったりしないから大丈夫だよ……それと、彼、父さんの紹介でさ。断れなくて」 「結論はそこか。現場の苦労もちったぁ考えろこの野郎」 「あぅぅぅ……御免なさい御免なさい…」 秀と出道のやり取りを、おろおろと見つめているディラン 高元は、この状況についていけないのか、半ば呆然としていて …この学校町に、契約者として生きる以上 平穏はないのか、と秀は半ば、諦めるしかないのだった 終われ 前ページ連載 - 花子さんと契約した男の話
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色鮮やかな浴衣が踊る 己の契約者は、昨日とは違う浴衣を纏っていた 昨日の浴衣は戦闘中に汚れてしまったから、着る気がしないのだろう 帯を可愛らしく結び、子供っぽさを強調した姿 だが、そうだと言うのに、その浴衣のデザインは、どこか大人びたもの そのアンバランスさがまたいいのだが 「…変な事考えてない?」 「いや、何も」 契約者の言葉に、首を左右に振る 変な事は考えてないぞ 当たり前の事を考えていただけだ 「…なら、いいんだけど」 肩をすくめ、契約者は祭り会場を歩いていく 祭り会場には、相変わらず、堂々と歩いている都市伝説たちの姿が見えた まぁ、今回のような機会でもないと、祭に参加して楽しむなど、できない都市伝説たちも多いだろう 案外、いい機会なのかもしれない 祭というものはいいものだ ロリの浴衣、うん、素晴らしいぞ 浴衣になっても、歩き方は洋服のままの子供が多いから、微妙に浴衣が着崩れてきたり ちらり、ちらり、足が見えたり …うん、いいぞ、いいぞ 「…やっぱり、変な事考えてるでしょ?」 「いいや」 あくまで、首を左右に振ってみせる 変な事ではない これは、全て当たり前のことなのである ロリは素晴らしい だからこそ、ロリを観察するのは、別に変な事ではあるまい 「…全く」 契約者は、小さくため息をつく やや早脚になった彼女の後を、決してはなれずについていく 結局、彼女の父親は何も知らないままだ この秋祭りが、ある都市伝説を倒すために利用された事は知らないまま きっと、それでいいのだろう 知らないままの方がいいのだ 自分も都市伝説であるが、その存在は広く知られない方がいいと思う それによって、良い結果がもたらされるとは限らないのだから 「…それよりも、せっかくの祭なんだ。もう少し、屋台を楽しんだらどうだ?」 「……そうは言っても、ねぇ」 …まぁ、育ちが育ちである 出店の、屋台の食べ物なんて、ほとんど食べたことがないのだ 夏祭りの時とて、見て回っただけで、何かを食べたりはしていなかった 秋祭りの1日目だって、そうだ 自分の契約者は、祭を心から楽しむことなど、できていない 父親が金を出資している祭だから、視察に来ている それくらいの認識しかないのだ 1日目、友人である少年と一緒に居た時とて、少年がはしゃぐ様子を見て和んでこそいたものの…祭自体を楽しんでいる様子がなかった まだ、子供なのだ まだ、ロリなのだ もっと、無邪気に祭を楽しんでもいいと思うのに この契約者は、早く大人になろう、大人になろう、と焦りすぎている 大人に囲まれてばかりの環境、背伸びしたくなるのはわかるのだが …もっと、ゆっくりでいい ロリの時間は貴重なのだ まぁ、そうやって貴重だからこそ、ロリとは人類の至宝であり、護るべき存在であると理解しているが 「…楽しんだら、って言っても。何をしたらいいのかわからないわ」 ぼそり 契約者が呟く …祭を楽しんだ事がないから 楽しみ方も、わからない 「気になる食べ物があれば、買って食べて見ればいいだろうし、クジなり射的なりをやってみたかったら、やってみればいい 幸い、軍資金はたっぷりあるだろ?」 「まぁ、確かにそうだけどね」 それじゃあ……と、契約者は、周囲の屋台を見渡しだす …その、表情に かすかに、子供らしさと言うか、歳相応のロリっぽさが戻ってきて その事実に、ほっとした やはり、ロリはロリらしくしているのが一番だ 「…ところで」 「何だ?」 「浴衣姿のちみっこたちに見とれてんじゃないわよ?」 っが!!!! 下駄で、盛大に足を踏まれて おぉおおお……っ!?久々に程よい痛みがっ!? こちらがうめいている間に、契約者はさっさと歩き出して 痛む足を引きずりながら、慌てて追いかける 秋祭り、最終日 せめてこの日に、契約者が少しでも楽しんでくれればいいのだ fin 前ページ連載 - 赤い靴